あらすじ
漢方薬を売りながら、知的障害のある息子トジュン(ウォンビン)と2人暮らしの母
(キム・ヘジャ)。
ある日、2人が住む町の廃屋の屋上で、女子高生アジョン(ムン・ヒラ)の死体が発見される。
その殺人事件の容疑者として、トジュンが刑事に連行される。
刑事はトジュンを犯人と決めつけて、半分だますように拇印を押させる。
トジュンの無実を信じる母は弁護士を頼もうとするが、弁護士は頼りにならず、
自分で真犯人を見つけようと、被害者アジョンの周囲の人に接触をはじめるが・・・
極力ネタバレなしのレビュー
おそらく「殺人の追憶」を観ていなければ、
「息子の無実を信じて奮闘する母のお話」というフレーズから連想しやすい
「人情的」「感動的」な映画だと思って観始めたことと思います。
でも実際は、全く人情的ではなく(逆に非人情的ともいえるくらい)、
いい意味での感動的な映画でもありません。
ストーリー的には、決してハッピーエンドとは言えない終わり方なので、
観終わった後の感想も、後味が悪いと感じる人が多いかもしれませんが、
私は、犯人がちゃんと分かって全ての謎がきっちり解けるという点で、
「殺人の追憶」よりもむしろスッキリとしました。
とにかく、キム・ヘジャさんが圧巻。
映画の冒頭で、いきなりだだっ広い草原で妙なダンスをはじめるキム・ヘジャさん。
田舎っぽい町並みの中にある店内で、店の外の道路を挟んだ向かいにいる息子にばかり
気をとられながら、漢方薬をジャキッ、ジャキッと刻むキム・ヘジャさん。
(ここは「いつか指を切る、いつか指を切る・・・」とハラハラして気が気でなかった…)
もうここで、いろんな意味で「不安定」な感じがして落ち着かなくなってしまいました。
キム・ヘジャさんのことは、ドラマ「宮」の皇太后役しか観たことなかったのですが、
あの上品でおっとりした所作をしていた人とは違って、
とても危うい雰囲気をまとった「母」でしたし、
知的障害のある役をウォンビン氏が演じるということで、
一体どんな風になるのか想像がつかなかったのですが、
こちらもまた全く違和感なく「トジュン」でした。
ウォンビンの演技力も素晴らしいですね・・・。
「母なる証明」も「殺人の追憶」と同様、真犯人を追い求めるストーリーではあるのですが、
必ずしも真犯人を見つけて捕まえることが本題ではなく、
追う者がある状況に陥った時にどういう行動をとるか?どういう感情を出すか?
そしてその後、どのように生きていくか?
そんなところを表現することを目的としているように、私は思いました。
ラストのシーンは、また冒頭のシーンに還るのですが、
冒頭のシーンがあれだけ長く印象的だったことが、このラストに猛烈に活かされていることには
もう感嘆するしかありませんでしたね。
観終わった後は、映画としての素晴らしさとストーリー結末のモヤモヤ感とが混ざって、
これまた何ともいえない余韻が残りました。