韓国映画が好きなんです。

「弁護人」あらすじとレビュー

あらすじ

高卒で苦労して司法試験に合格したソン・ウソク(ソン・ガンホ)は、
検察官をやめて、釜山で弁護士事務所を開き、
お金を稼ぐために、登記そして税務専門の弁護士として活動する。

ある時、ウソクが苦労していた時代からの行きつけのクッパ屋のおばさん(キム・ヨンエ)の
息子ジヌ(イム・シワン)が、公安当局に突然逮捕・監禁され、拷問を受ける。

面会に行ったおばさんとウソクは、
ジヌの体に無数の傷跡があることに衝撃を受ける。

俗物弁護士だったウソクだが、誰も引き受けたがらない国家保安法の裁判で
ジヌの弁護人を引き受けることを決める。

極力ネタバレなしのレビュー

はじめの俗物ぶりから、ジヌの傷跡を見て弁護人を引き受けることを決めてからの姿まで
さすがソン・ガンホ氏です。

俗物だった時でも飄々として嫌味を感じさせないところなど、
ガンホ氏の真骨頂だと思いました。

ただ、ソン・ガンホ氏でなければこの映画は
もっと陳腐なものになっていたような気もします。

ソン・ガンホ、キム・ヨンエ、イム・シワン
この3人の演技がとにかく良かった映画でした。

ウソクがジヌの弁護人になることを決めるまでの過程も、
大げさなシーン、劇的なシーンは特になく
それがまた個人的には良かったです。

誰も味方になってくれない、警察検察だけでなく裁判官までも
有罪にすることを既定路線として裁判を進めていく中で、
「国家の主権は国民にある」とウソクが叫ぶシーンがあります。

現代の日本人なら当たり前のことが、そうではなかった時代というのは、
当時の韓国だけでなくおそらく昔の日本にもあったのでしょう。

この映画は、1981年9月に実際に起きた「釜林(プリム)事件」がモチーフになっています。
ソン・ガンホ演じた弁護人は、実際には盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領とのこと。

ただ、主人公が元大統領ということは映画の中では全く触れられていないし、
この映画の内容に直接関係することではありません。

罪のない人たちが、共産主義への見せしめのために言いがかりをつけられて
不当に逮捕監禁拷問を受ける、ということへの批判、
さらには、国家主導でそのようなことが行われることへの危惧と警鐘、
そういったことが、映画を観ていて感じられました。

拷問のシーンもわりとリアルです。
日本の映画などでは、おそらくサラッと流されるであろうシーンも、
執拗に描いています。

殴る蹴るは当たり前で、
水の中に顔を押し付ける
横に渡された鉄棒のようなところで手と足を括りつけて逆さ吊りにする
果ては、仰向けにした顔の上にタオルをのせてラーメンの汁をかける、など。

文字にすると大したことのないように思えますが、実際の映像はキツイです。
ジヌ役のシワン君は、新人賞にノミネートされるだけある迫真の演技でした。

朝鮮戦争
軍事政権
民主化運動

日本と韓国ではまた事情は違うと思いますが、
軍事政権下では人権などお上(国)のさじ加減ひとつで
簡単になくなってしまうものなのだな、ということを改めて実感しました。

映画冒頭の、周囲の弁護士たちに蔑まれていたウソクが、
ラストでは・・・
この対比が、映画を観終わった後味を良いものにしてくれました。

満足度 

※韓国公開時の予告編です

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