あらすじ
中国・延辺朝鮮族自治州で、麻雀卓を囲むグナム(ハ・ジョンウ)とミョン(キム・ユンソク)。
グナムは、妻を韓国に出稼ぎに行かせるため、6万元の借金をしていた。
その借金を返そうと麻雀賭博に手を出すが、弱すぎて逆にカモになってしまう。
さらには、韓国に行った妻も音信不通になり、娘はグナムの母親の家に預けられている。
ある日、借金取りからミョンのところに連れて行かれたグナムは、ミョンから「韓国へ行ってある人物を殺せば金をやる」と言われる。
悩むグナムだったが、結局請け負う。
黄海を渡る船で、韓国に密航したグナム。
ミョンから殺すように言われた人物キム・スンヒョン(クァク・ドウォン)を見つけ、殺す計画を立てるが、その計画を遂行しようとした同じ夜に別の人物がキム・スンヒョンを殺してしまう。
だが、監視カメラにはグナムが映っており、グナムは殺人犯として警察から追われる身となる。
極力ネタバレなしのレビュー
前半の、ミョンから殺人依頼を請けて韓国に密入国し、キム・スンヒョン殺害の計画を立て、殺そうとした日にたまたま別口がキム・スンヒョンを殺してしまって、でも殺人犯の濡れ衣を着せられて警察から追われることになった時点では、正直ちょっと自分的にはハズレの映画かな・・・という思いがよぎりました。
唯一、殺される標的となったキム・スンヒョン役がクァク・ドウォンさんだったところで「おお、来たな」と思いましたが(笑) クァク・ドウォンさんはほんとにこういう役が上手いですね~
殺人事件の現場に警察官があれだけたくさん集まってきて、パトカーまで使ってハ・ジョンウを追いかけるのに(ハ・ジョンウは走って逃走)捕まえられないとか普通ではあり得ないですが、映画としてはここは逃げ切れないとストーリーが進まないのでたぶん逃げることができるんだろうな、と見ていたら、ほんとに逃げ切ってしまって(笑)
ナ・ホンジン監督は「チェイサー」でも警察の無能っぷりをこれでもかと描いてましたが、「哀しき獣」でもやはりそうなのだな、と。
ここまでは自分的にあまり盛り上がっていなかったのですが、後半大活躍のミョン役キム・ユンソク氏が出てきてからは俄然引きこまれました。
また、途中から登場のキム・テウォン(チョ・ソンハ)が黒幕かと思っていたらそうでもなく、こちらもグナムを追いかけはじめる、ということで、ここからはグナムの逃走劇なのかと思ったら、またなんだか違う展開になって謎が積もっていく。
警察からもキム・テウォンやミョンからも逃げ続けるハ・ジョンウが、だんだんハードになっていくのもゾクゾクしました。
この辺からは、斧、刃物、牛骨(笑)を使っての血みどろどろどろの乱闘続き。
ただ、チェイサーのような陰惨さはなく、とにかくハードでしたね。
そして、終幕に向かっていくうちにキム・スンヒョン殺しの謎(ミョンに依頼した黒幕と、なぜキム・テウォンがキムスンヒョンを殺そうとしたのか)が明らかになっていくのですが、こういう謎が解けていく過程は大好きです。
ただし、キム・テウォンが動機を語る部分はかなり無理があると思いましたが(あの状態で喋れるのか?というね)
さらには結末。
いろんなことが思わせぶりな雰囲気で流れていくので、ここはもう明確な答えはなく、観た人がどう思うかなのではないかと思います。(私なりの考えもありますが、ネタバレになるためここでは割愛)
エンドロールを見ながら、なかなかに切ない気持ちになりました。
ラストは、原題の「黄海」の方が似合いますね。